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レッツ・ダンス

フィギュアスケートの話です。 書き始めたばかりなので、温かく見守ってください。


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カナダの天才ジャンパー/レッツ・ダンス(#42)

「世界選手権男子フリー最終グループ。四人の演技をお届けします。ジャンパーが三人続きます。最初に演技するのは、アメリカのルーク・ウォーター選手です。凄く気合の入った顔をしてますね」
「ショートの成績が不服なんでしょう」
「ジャンパーとしての進化するポテンシャルに期待しましょう。ルーク・ウォーター、曲は『オペラ座の怪人』」

黒に大きな白いマスクをあしらった衣装のウォーターが滑り出した。五回転サルコウからトリプルアクセル。
「五回転のコンビネーションが決まったー!」
「ジャンプが続きます」
単独の五回転サルコウ。
「二回目の五回転も決まった!」
フライングキャメルスピンから脚を代えてシットスピン、そしてアップライトスピンへ。そして、激しいステップ。キャメルスピンからシットスピン、脚を代えてシットスピンへ。
「今のところミスはありません」
トリプルアクセルからトリプルトゥループ。
「四回転アクセルは入れないようです」
四回転ルッツから四回転サルコウ。十分に間を開けてトリプルアクセル。フライングシットスピン、脚を代える。四回転フリップ。激しいステップを中心としたコレオシークエンス。最後は四回転ループを跳んで、ジャッジ席を睨みつける。観客席からは惜しみない拍手が送られる。
「クリーンでした。高得点が期待できます」
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あんな奴がいるなんて/レッツ・ダンス(#41)

控え室のドアを乱暴に開けてルーク・ウォーターが出てきた。やんちゃな顔が怒りに震えている。ウォーターの後にスーツを着た初老の男が付き従う。
「じい!練習できるところを探せ!金はいくらかかっても構わない」
「分かりました」
「あんな奴がいるなんて」
ギシギシと音が聞こえてきそうなほど歯を食いしばるウォーター。

「放送席、放送席。観客席にいた白雪選手に来ていただきました」
通路でインタビューを受けている優。
「ショート二位おめでとうございます」
「ありがとうございます」
「素晴らしいジャンプでしたね」
「あ、はい」
ランビエールが後ろを通りながら、優の頭をくしゃくしゃと撫でる。
「ちょ、やめてよ」
ランビエールはニコニコと笑いながら振り返りもせずに、手を上げて挨拶する。
「それにしても、背が高いですね。どのぐらいですか?」
「190センチです」
「その身長で跳ぶから、凄い迫力がありましたよ」
「ありがとうございます」
ケヴィンが後ろを通りながら、ジャンプして優の頭を叩く。
「いってー!」
ケヴィンは振り返って、笑顔でアッカンベーをして、足早に去って行った。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい」
「明日の目標は?」
「はい、優勝です。ヒー!」
ジョニーが後ろを通りながら、優のヒップを撫でたのだ。優は真っ赤な顔をして、ジョニーを睨む。ジョニーは投げキッスしながらウインクして去ろうとした時、置いてあった誰かのバッグに躓き、転倒する。
「他の選手に可愛がられている白雪選手でした」

これぞ、まさに夢の世界/レッツ・ダンス(#40)

フィギュアスケート世界選手権男子ショート。会場から大きな歓声が起きる。
「さあ、男子ショートの最後を飾るのは、フィギュアスケート界のキングことスイスのエステファン・ランビエール選手です」
ランビエールは満面の笑みを浮かべて、手を振りながら開始位置へと向かう。
「曲は映画アラジンよりホール・ニュー・ワールド」
曲が始まるとともに大きな動きで滑り出したランビエール。笑顔のまま軽々と5回転を決める。
「5回転、決まったー!」
「完璧です」
エッジの効いた優雅なステップを踏んで、4回転x4回転。
「4回転x4回転!これも、決まったー!」
『まずいな。これで、4回転アクセルを跳ばれたら負けだ』
アラベスクスパイラルからハイドロブレーディング、そして4回転アクセル。
「4回転アクセルも決まったー!回転不足ないですよね」
「はい。美しい4回転アクセルです」
フライングシットスピンからレイバックスピン、そしてアップライトスピンで演技が終了した。湧き上がる歓声。
「素晴らしい!これぞ、まさに夢の世界!」
『負けたな』

悲しげな表情に怒りの色が加わった/レッツ・ダンス(#39)

世界選手権男子ショート。ジョニー・ウィアードが演技をしている。美しいスピンを決めた後、エッジを効かせて体を嫋やかに倒しながらステップを踏んでいく。四回転ルッツを決め、激しいステップの後、トリプルアクセルを決めた。滑りながらお姉座りになって演技が終了した。会場から起きる大きな拍手。
「素晴らしかったですね。演技に引き込まれてしまいましたよ」
「クリーンな演技でした」
『さすがジョニーだ。だが、それでは届かない』

あせって構成変えやがったな/レッツ・ダンス(#38)

世界選手権の放送席。
「本田さん、最後の四回転アクセルの名前は?」
「あれは、普通に四回転アクセルです」
「(残念そうに)そうですか。それにしても、どうやってあのような独創的な技を編み出したのですか?」
「優にはコーチがいません。フィギュアスケートバカが常識にとらわれずに一人で練習した成果です。この大会は常識と非常識の闘いになるかもしれません」
「なるほど。かなりの高得点が出たので、一位のままフリーを迎えることも期待できますね」
本田は苦笑した。
「さて、それではいよいよ最終グループ四人の演技を観ていきたいと思います。リンクに現れたのは、世界で初めて五回転を決めたアメリカのルーク・ウォーター。見どころは、やはりジャンプですね」
「はい。迫力ある切れのよいジャンプ。そして、常に進化し続けているところが魅力です」
「さあ、始まります。曲はビートルズで、ブラックバード」
漆黒の衣装に身を包んだウォーターがすべり始めた。ステップを入れてからの五回転X四回転。湧き上がる歓声。
「本田さん!五回転X四回転ですよ!これが、進化ですね!」
「得意の五回転に無理に四回転をつけてます。五回転の方は回転不足かもしれません」
『ウォーターの奴、あせって構成変えやがったな。だから、優に会っておけばよかったのに。若いってのは、困ったもんだ』
「五回転です!」
「これは完璧ですね。彼らしい切れのある五回転です」
ステップ、スピンを無難に決め、最後のジャンプへと向かうウォーター。
「跳んだ!四回転アクセル!ルーク・ウォーターも四回転アクセルを跳びました」
「切れはありますが、これも回転不足ですね」
『完成してないのをぶっつけ本番ってとこだな』

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