レッツ・ダンス
フィギュアスケートの話です。 書き始めたばかりなので、温かく見守ってください。
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秘密を教えてよ/レッツ・ダンス(#2)
「パパかママは？」
本田さんは僕に優しく聞いてくれた。
「いない」
「いないって…迷子だね」
「違う」
「迷子だろ」
「違う」
「よし、分かった。じゃあ、確かめさせてくれ。いいね」
「いいよ」
「じゃあ、事務所に行ってみよう。迷子だったら届けが出てるはずだ」
「ふーん」
「君、名前は？」
「しらゆきゆう」
「嘘じゃないね」
僕はリュックからパスポートを出して本田さんに渡した。
「白雪優君か。嘘じゃないことは分かった。疑って、ごめんね」
「いいよ。許す」
本田さんは僕に優しく聞いてくれた。
「いない」
「いないって…迷子だね」
「違う」
「迷子だろ」
「違う」
「よし、分かった。じゃあ、確かめさせてくれ。いいね」
「いいよ」
「じゃあ、事務所に行ってみよう。迷子だったら届けが出てるはずだ」
「ふーん」
「君、名前は？」
「しらゆきゆう」
「嘘じゃないね」
僕はリュックからパスポートを出して本田さんに渡した。
「白雪優君か。嘘じゃないことは分かった。疑って、ごめんね」
「いいよ。許す」
本田さんは僕を事務所っていうところに連れて行って、何か聞いていたが、迷子の届けは出ていなかったらしい。その後、電話を借りてどこかに連絡していた。僕達は外へ出た。
「君の言う通り迷子の届けは出てなかったよ。日本大使館にも連絡してみたけど、こっちにも届けは出てなかった。君をすぐに大使館に連れて行くべきなんだろうけど、少しの間預からせてもらえるようお願いした。事務所と大使館には、君の親から連絡があったらケータイに電話してもらうことにしたよ。エキジビジョンを観たら一緒に大使館に行って、大使館の人に君を預かってもらう、いいね」
「了解!」
「いい返事だ。お腹空いてるんだろ。食事にしよう」
本田さんは僕をレストランに連れて行ってくれた。食事をしながら僕は本田さんに聞いた。
「どうすれば、本田さんみたいにフィギュア・スケートがうまくなるの？」
「俺のこと、知ってるんだ」
「もちろんだよ。本田さんのジャンプは大好きだ」
「そうか。嬉しいよ」
「でも、痩せた方がいいよ。痩せたら、もっと格好良くなる」
「太ってる分だけエネルギーが詰まってるのさ」
「ねえ、何をすればフィギュア・スケートがうまくなれる？」
「いいコーチにつくことだな」
「コーチがいなかったら？」
「自分が、いいコーチになることだな。常に冷静に客観的に自分を見ることだ。難しいか…。自分に対して厳しくあれってことさ」
「それだけじゃ、うまくなれないよ。秘密を教えてよ」
「脚力。脚の力。三歩でトップスピードになれなきゃダメだ。スピードは速い方がいい」
「分かる。パンサー・チャンの速いすべりを見ているとワクワクしてくる」
「足首や膝の柔らかさ」
「？」
「足首や膝の動きが柔らかいと、高く跳べるし、着氷がスムーズで負担が少ない」
「本田さんのふわっとしたあれ？」
「そうそう。俺は膝の使い方がうまいから」
「体幹力。ポーズをびしっと決める体の奥の力だ。そして、バランス感覚、リズム感、チャレンジする勇気」
「いっぱいやることあるんだね。みんな、すごいな」
「すごいだろ。でも、まだある。君は高橋選手が好きだろ？」
僕は大きく頷いた。
「彼がすごいのは、表現力と個性。表現力ってのは観ている人に伝える力だ。伝えるものは、メッセージ、思い、気持ち、気分、いろいろだ。個性は、その人だけがもっているもの」
「そっか」
「そして、観客がどう感じているか分かる力。観客を味方につけて、審判もファンにするんだ。昨日の高橋選手の演技は会場が一体になってすごかっただろ」
「すごかった」
「思いつくのは、これぐらいかな。どう、うまくなれそう？」
「ありがとう。頑張ってみる」
「そういえば、優君はフィギュア・スケートやってるの？」
僕は首を横に振った。
「スケートしたことある？」
僕は泣きそうになった。
「そうか、じゃあ、全部これからなんだ。初めてすべった時のこと憶えてるけど、叫び出したくなるほど楽しいぞ。優君がどれだけうまくなるか楽しみにしてるよ。そうだ、君が大きな大会に出るようになったらコーチをさせてくれ」
本田さんは手を差し出してきた。僕は本田さんと握手した。
－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－－
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「君の言う通り迷子の届けは出てなかったよ。日本大使館にも連絡してみたけど、こっちにも届けは出てなかった。君をすぐに大使館に連れて行くべきなんだろうけど、少しの間預からせてもらえるようお願いした。事務所と大使館には、君の親から連絡があったらケータイに電話してもらうことにしたよ。エキジビジョンを観たら一緒に大使館に行って、大使館の人に君を預かってもらう、いいね」
「了解!」
「いい返事だ。お腹空いてるんだろ。食事にしよう」
本田さんは僕をレストランに連れて行ってくれた。食事をしながら僕は本田さんに聞いた。
「どうすれば、本田さんみたいにフィギュア・スケートがうまくなるの？」
「俺のこと、知ってるんだ」
「もちろんだよ。本田さんのジャンプは大好きだ」
「そうか。嬉しいよ」
「でも、痩せた方がいいよ。痩せたら、もっと格好良くなる」
「太ってる分だけエネルギーが詰まってるのさ」
「ねえ、何をすればフィギュア・スケートがうまくなれる？」
「いいコーチにつくことだな」
「コーチがいなかったら？」
「自分が、いいコーチになることだな。常に冷静に客観的に自分を見ることだ。難しいか…。自分に対して厳しくあれってことさ」
「それだけじゃ、うまくなれないよ。秘密を教えてよ」
「脚力。脚の力。三歩でトップスピードになれなきゃダメだ。スピードは速い方がいい」
「分かる。パンサー・チャンの速いすべりを見ているとワクワクしてくる」
「足首や膝の柔らかさ」
「？」
「足首や膝の動きが柔らかいと、高く跳べるし、着氷がスムーズで負担が少ない」
「本田さんのふわっとしたあれ？」
「そうそう。俺は膝の使い方がうまいから」
「体幹力。ポーズをびしっと決める体の奥の力だ。そして、バランス感覚、リズム感、チャレンジする勇気」
「いっぱいやることあるんだね。みんな、すごいな」
「すごいだろ。でも、まだある。君は高橋選手が好きだろ？」
僕は大きく頷いた。
「彼がすごいのは、表現力と個性。表現力ってのは観ている人に伝える力だ。伝えるものは、メッセージ、思い、気持ち、気分、いろいろだ。個性は、その人だけがもっているもの」
「そっか」
「そして、観客がどう感じているか分かる力。観客を味方につけて、審判もファンにするんだ。昨日の高橋選手の演技は会場が一体になってすごかっただろ」
「すごかった」
「思いつくのは、これぐらいかな。どう、うまくなれそう？」
「ありがとう。頑張ってみる」
「そういえば、優君はフィギュア・スケートやってるの？」
僕は首を横に振った。
「スケートしたことある？」
僕は泣きそうになった。
「そうか、じゃあ、全部これからなんだ。初めてすべった時のこと憶えてるけど、叫び出したくなるほど楽しいぞ。優君がどれだけうまくなるか楽しみにしてるよ。そうだ、君が大きな大会に出るようになったらコーチをさせてくれ」
本田さんは手を差し出してきた。僕は本田さんと握手した。
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