レッツ・ダンス
フィギュアスケートの話です。 書き始めたばかりなので、温かく見守ってください。
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俺は日本のフィギュアスケートが大好きなんだよ/レッツ・ダンス(#31)
「断ります」
「な、何言ってんだ、優」
「だって、俺、日本のフィギュアスケートのために滑りたいわけじゃないから」
呆然とする本田。川口は唇を噛みしめている。
「話は終わり?」
「優」
アヤメが口を開いた。
「私、ずっと気になっていたことがあるの」
優が不思議そうな顔をする。
「ダンスって、女性が男性に体を預けるでしょ」
「ああ」
「優は私の試合を観て私を選んでくれた。でも、私は優の試合を観たことがないわ。優に体を預けていいのか不安なの」
「大丈夫だ。自分がどうなろうとアヤメを守るよ」
「もし優が本番のプレッシャーに弱かったら、私は大怪我をするかもしれない」
「大丈夫、俺、歓声とか好きだから。サッカーで経験してるし」
「口では何とでも言えるわ。サッカーの試合も私は観てないし、サッカーとフィギュアは違う。フィギュアの試合に出ている優を私に見せて」
考え込む優。川口が優の背中をポンと叩いた。
「優君らしくないぞ」
優は川口の笑顔に微笑み返した。
「やるよ」
「そうか。よかった…本当によかった」
涙をこぼしながら喜ぶ本田。
「そんなに喜ばれても、本田さんの期待に応えられるかどうか分からないよ」
「お前は日本のフィギュアスケートのために滑りたいわけじゃないって言うけど、俺は日本のフィギュアスケートが大好きなんだよ。かつての選手も、今の選手も、これから選手になる卵たちも大好きなんだ」
「本田君がいれば、日本はまたフィギュア王国になれるかもしれないわね」
「そんな、俺の力なんて…」
「冗談よ」
「勘弁してくださいよ、川口さん」
「優君、本田くんにコーチになってもらう?」
「いいよ、俺、一人でやるから」
「そう言うと思ったよ。コーチとしてではなく、先輩としてお前にしてやりたいことがある」
「?」
「な、何言ってんだ、優」
「だって、俺、日本のフィギュアスケートのために滑りたいわけじゃないから」
呆然とする本田。川口は唇を噛みしめている。
「話は終わり?」
「優」
アヤメが口を開いた。
「私、ずっと気になっていたことがあるの」
優が不思議そうな顔をする。
「ダンスって、女性が男性に体を預けるでしょ」
「ああ」
「優は私の試合を観て私を選んでくれた。でも、私は優の試合を観たことがないわ。優に体を預けていいのか不安なの」
「大丈夫だ。自分がどうなろうとアヤメを守るよ」
「もし優が本番のプレッシャーに弱かったら、私は大怪我をするかもしれない」
「大丈夫、俺、歓声とか好きだから。サッカーで経験してるし」
「口では何とでも言えるわ。サッカーの試合も私は観てないし、サッカーとフィギュアは違う。フィギュアの試合に出ている優を私に見せて」
考え込む優。川口が優の背中をポンと叩いた。
「優君らしくないぞ」
優は川口の笑顔に微笑み返した。
「やるよ」
「そうか。よかった…本当によかった」
涙をこぼしながら喜ぶ本田。
「そんなに喜ばれても、本田さんの期待に応えられるかどうか分からないよ」
「お前は日本のフィギュアスケートのために滑りたいわけじゃないって言うけど、俺は日本のフィギュアスケートが大好きなんだよ。かつての選手も、今の選手も、これから選手になる卵たちも大好きなんだ」
「本田君がいれば、日本はまたフィギュア王国になれるかもしれないわね」
「そんな、俺の力なんて…」
「冗談よ」
「勘弁してくださいよ、川口さん」
「優君、本田くんにコーチになってもらう?」
「いいよ、俺、一人でやるから」
「そう言うと思ったよ。コーチとしてではなく、先輩としてお前にしてやりたいことがある」
「?」
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日本はかつてフィギュア王国と呼ばれていた/レッツ・ダンス(#30)
数ヶ月がたち、優とアヤメのデビュー戦の日がきた。澄みきった青空。ジャージ姿のアヤメが今にも走り出しそうに颯爽と歩いている。その姿の美しさに立ち止まって見惚れる人もいる。子犬がアヤメの方に駆けてくる。アヤメはしゃがんで子犬を受け止める。子犬は尻尾をぶんぶん振りながら、アヤメの顔をペロペロ舐める。
「すいませーん」
子犬の飼い主がアヤメの方へ走ってくる。笑顔で応えるアヤメ。ざわめき。飼い主の視線がアヤメの後ろへ向き、顔が急にひきつって立ち止まった。後ろを振り向くアヤメ。暴走自動車が歩道のアヤメの方へ猛スピードで走ってくる。アヤメは子犬を抱きしめて、立ち上がった。
救急車のサイレン音。
「すいませーん」
子犬の飼い主がアヤメの方へ走ってくる。笑顔で応えるアヤメ。ざわめき。飼い主の視線がアヤメの後ろへ向き、顔が急にひきつって立ち止まった。後ろを振り向くアヤメ。暴走自動車が歩道のアヤメの方へ猛スピードで走ってくる。アヤメは子犬を抱きしめて、立ち上がった。
救急車のサイレン音。
私をコーチにする?/レッツ・ダンス(#29)
「分かりました。先生ともお別れです。せいせいするよ。あんなでかい女とはやりたくなかったんだ」
川口の平手打ちが丸山の頬に飛んだ。涙をボロボロ流す丸山。
「海外に行く。日本には俺のパートナーにふさわしい奴はいない。新しいパートナーを見つけて、お前らの上に立ってやる」
立ち去る丸山に優が笑顔で言った。
「受けて立ちます。あなたは、もっと練習して、一緒に闘う仲間をリスペクトすれば、きっといい選手になりますよ」
「ふざけんな!二度と俺に話しかけるな!」
振り返って睨みつける丸山と笑顔の優。再び出口へ向かう丸山。優は丸山に向かって頭を下げた。
『あの笑顔を消してやる。お前たちがくずカップルだということを思い知らせてやる。あいつを見つけだすんだ。あいつと組めさえすれば…』
丸山は残酷な笑顔を浮かべた。
川口の平手打ちが丸山の頬に飛んだ。涙をボロボロ流す丸山。
「海外に行く。日本には俺のパートナーにふさわしい奴はいない。新しいパートナーを見つけて、お前らの上に立ってやる」
立ち去る丸山に優が笑顔で言った。
「受けて立ちます。あなたは、もっと練習して、一緒に闘う仲間をリスペクトすれば、きっといい選手になりますよ」
「ふざけんな!二度と俺に話しかけるな!」
振り返って睨みつける丸山と笑顔の優。再び出口へ向かう丸山。優は丸山に向かって頭を下げた。
『あの笑顔を消してやる。お前たちがくずカップルだということを思い知らせてやる。あいつを見つけだすんだ。あいつと組めさえすれば…』
丸山は残酷な笑顔を浮かべた。
男性が女性に合わせようとすることが大事なのよ/レッツ・ダンス(#28)
「さっきツイズルの練習してましたよね。あれやってみます」
「俺が苦労してるんだ。お前なんかがあいつと合わせられるもんか。おい、アヤメ!手ぇ抜くなよ。手ぇ抜いたらすぐ分かるからな」
「アヤメ!打ち合わせしよう!」
優はアヤメの手をとって皆からすーっと離れて行った。優が指を回しながらアヤメの先ほどのツイズルを再現してみせている。頷くアヤメ。優が何ごとかを告げ、歌を口ずさむ。アヤメは少し考え、一言話す。その後は交互に一言ずつ話し、二人の顔は笑顔に満ちてくる。アヤメの一言に優が頷き、優はアヤメの手をとり、滑り出す。優が手を離し、アヤメがリンクを周り始める。その外周を優は滑りながらアヤメから目を離さない。アヤメが先ほどのツイズルをより速く回る。優雅さと力強さが合わさったその美しさに、観ている練習生からため息が漏れる。優がアヤメに何かを告げる。頷くアヤメ。一周し、二人のツイズルが始まった。後ろに上げた足のブレードをつかんで回転。優はアヤメから目を離さずに合わせていく。反対側の足を後頭部まで上げてブレードをつかみ、ヘアカッターのポーズで反対方向に回転し、滑り終えた二人は手を取り合った。残念そうな顔をする川口。湧き上がる拍手。
「俺が苦労してるんだ。お前なんかがあいつと合わせられるもんか。おい、アヤメ!手ぇ抜くなよ。手ぇ抜いたらすぐ分かるからな」
「アヤメ!打ち合わせしよう!」
優はアヤメの手をとって皆からすーっと離れて行った。優が指を回しながらアヤメの先ほどのツイズルを再現してみせている。頷くアヤメ。優が何ごとかを告げ、歌を口ずさむ。アヤメは少し考え、一言話す。その後は交互に一言ずつ話し、二人の顔は笑顔に満ちてくる。アヤメの一言に優が頷き、優はアヤメの手をとり、滑り出す。優が手を離し、アヤメがリンクを周り始める。その外周を優は滑りながらアヤメから目を離さない。アヤメが先ほどのツイズルをより速く回る。優雅さと力強さが合わさったその美しさに、観ている練習生からため息が漏れる。優がアヤメに何かを告げる。頷くアヤメ。一周し、二人のツイズルが始まった。後ろに上げた足のブレードをつかんで回転。優はアヤメから目を離さずに合わせていく。反対側の足を後頭部まで上げてブレードをつかみ、ヘアカッターのポーズで反対方向に回転し、滑り終えた二人は手を取り合った。残念そうな顔をする川口。湧き上がる拍手。
気持ちいいぐらい速いね/レッツ・ダンス(#27)
「レディに対して『あいつ』は失礼だよ」
優は丸山に胸倉をつかまれながら言った。大きく頷く川口。丸山の顔は怒りで真っ赤になる。
「うっせえよ。大体、お前なんか見たことないぞ」
「もしかして海外組?」
男子練習生の一人が言った。ぎくっとする丸山。
「海外なんて行ったことないよ」
「分かった。パートナーってスケートじゃなくて、恋人?」
女子練習生の一言に、皆がどよめき、アヤメを見る。憤慨するアヤメ。噴出す丸山。丸山は優の胸倉をつかんでいた手を離した。
「何だ、そんなことか。じゃあ、練習の邪魔をせずに見てろ」
「違う、違う。アヤメにはアイス・ダンスのパートナーになって欲しいんだ」
「あいつには、俺っていうパートナーがいるって言ってるだろうが」
「怒りん棒だなあ。だからかな、あなたのスケートは楽しくない。アヤメのスケートが生きないよ」
川口の顔から一瞬笑顔が消えた。
「偉そうに言いやがって。じゃあ、あいつと滑ってみせろ」
「アヤメと滑っていいですか?」
優が川口に確認する。頷く川口。
「アヤメと滑っていいんだ!やったー!」
優が両の拳を天に突き上げる。思わず拍手してしまう練習生たち。
優は丸山に胸倉をつかまれながら言った。大きく頷く川口。丸山の顔は怒りで真っ赤になる。
「うっせえよ。大体、お前なんか見たことないぞ」
「もしかして海外組?」
男子練習生の一人が言った。ぎくっとする丸山。
「海外なんて行ったことないよ」
「分かった。パートナーってスケートじゃなくて、恋人?」
女子練習生の一言に、皆がどよめき、アヤメを見る。憤慨するアヤメ。噴出す丸山。丸山は優の胸倉をつかんでいた手を離した。
「何だ、そんなことか。じゃあ、練習の邪魔をせずに見てろ」
「違う、違う。アヤメにはアイス・ダンスのパートナーになって欲しいんだ」
「あいつには、俺っていうパートナーがいるって言ってるだろうが」
「怒りん棒だなあ。だからかな、あなたのスケートは楽しくない。アヤメのスケートが生きないよ」
川口の顔から一瞬笑顔が消えた。
「偉そうに言いやがって。じゃあ、あいつと滑ってみせろ」
「アヤメと滑っていいですか?」
優が川口に確認する。頷く川口。
「アヤメと滑っていいんだ!やったー!」
優が両の拳を天に突き上げる。思わず拍手してしまう練習生たち。