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レッツ・ダンス

フィギュアスケートの話です。 書き始めたばかりなので、温かく見守ってください。


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突然で悪いんだけど、うちの子にならないか/レッツ・ダンス(#19)

アイスリンクからの帰り、優は監督の家に招かれて、優花の手料理を食べている。
「うわー、このサラダおしゃれだし、美味しい」
「ありがとう」
優花は自分は食べもせずに、楽しげに優を見ている。
「優花さんは食べないの?」
「優君が食べてるの見てると楽しい。もうちょっと見てていい?」
頷く優。
「優君てなんでも食べるのね。好き嫌いはないの」
「ママに鍛えられたんだ」
「いいママね」
「でも、ママは好き嫌いが多くて、ピーマンなんて見ただけで頭がガンガンしてたみたいだよ」
「そうなんだ」
「でね、僕がピーマンを嫌いにならないように無理してニコニコしながら食べるんだよ。そういうママが可愛くて好きなんだ」
「優花さんだって、可愛いんだぞ」
「うん。優花さんもとっても可愛いと思う」
「でしょ、でしょ」
優花は頬をピンクに染めて喜んでいる。
「優花さんは好き嫌いあるんですか?」
「自分がつくった料理が大好き」
「な~んか怪しいんだよな」
監督の竜一は顔を優の近くに寄せて小声で、
「きっと嫌いなものが入ってない料理しかつくらないんだよ」
優花が竜一の耳を後から引っ張っる。
「聞こえてるよ~。竜ちゃん」
「いててて!」
声を立てて笑う優。
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優花さん/レッツ・ダンス(#18)

優が初めてのアイススケートを思う存分に滑っている。終始笑顔で後向けに滑ってみたり、エッジを深くしてみて、転んだりしている。それを目で追う監督とコーチ。
「あれで初めてだなんてびっくりだな」
「でも、なんだか最初より転んでますね」
「慎重に滑るのを止めて、気持ちのままに滑っているんでしょう。失礼ですが、あなたも何か運動をしていらっしゃるんじゃないですか」
「少年サッカーチームの監督をしてます。彼は私のチームにいたんですよ」
「いた?」
「フィギュアスケートの方が好きだって言われちゃいましたよ」
「どうして彼をここへ」
「彼のおかげで優勝できました。そのお礼ですよ」
「優勝!そりゃすごいな。手放すのは惜しいでしょ」
「ええ。でも、あの笑顔を見せられちゃ」
「ほんと、楽しそうですね。彼にちゃんとフィギュアスケートを習わせてみたいな」
「あなたが教えてくれるのですか」
「いやいや。僕じゃダメでしょ。もっとちゃんとしたコーチを紹介しますよ」
「欲がないですね」
「あなたと一緒ですよ。自分を売り出すために彼を使うなんて考えたくもない」
「あなたの連絡先を教えていただけますか」
「もちろんですよ」

すげー!こんなに速いんだ!/レッツ・ダンス(#17)

優は監督に連れられてスケートリンクに来ていた。
「本当にスケート教室を受けなくていいのかい?」
「いいよ」
「初めてなんだろ。遠慮しなくていいんだよ」
「好きにしたいから」
優はスケートリンクに入ると、人のいない方に向かって腹ばいで滑る。止まった後もしばらく氷の感触を楽しんでいる優。近くを滑る人たちは不思議そうな顔をする。
『あの時と同じ笑顔だ。ワクワクしてるんだな』
優はゆっくりと立ち上がり、歩いてみる。ゆっくりとリンクを一周した後、屈伸で足首と膝をほぐす。優は対角線上をじっと見つめ、人がその直線上からいなくなったときに滑り出した。どんどんスピードを上げていき、優の目はキラキラと輝いていた。壁にぶつかる際に腕を使って衝撃を吸収した。
『すげー!こんなに速いんだ!』

次はぜってー点を取ってやる/レッツ・ダンス(#16)

得点のホイッスルが鳴り、試合終了を告げるホイッスルが続けて鳴らされた。若竹はボールを持ったまま、ゴールの中で呆然としている。ヒデたちベンチの選手、ウッチーらフィールドの選手達が優のところへ駆けて行った。動かない優をヒデが起こそうとする。
「ダメだ!動かすんじゃない!」監督がヒデを止めた。
「ヒデ」
「何だ?優」
「祝勝会。派手にやってくれ」
「任せろ!お前が決めたゴールだ。派手にやってやる。なあ、みんな!」
誰も何も言えない。
「なあ、みんな、お願いだ、派手にやろうぜ!」ヒデが涙をボロボロながしながら、叫んだ。
「おー!」「食べまくるぞ!」「派手にいこうぜ!」「俺、歌っちゃうぜ!」「やめろー、お前の歌だけはやめてくれー!」「俺はジャイアンかぁ!」みんなは口々に大声で叫んだ。
優は笑顔を浮かべたまま、また気を失った。
「俺はそいつが倒れたことに気を取られただけだ。本当だったら、最後のゴールは止めていた」いつの間にか近くにいた若竹が言った。
「うるせえぞ!ゴールは、ゴールだ!」ヒデが若竹に食ってかかる。
「俺に負けて泣いてた奴が偉そうに吠えるんじゃない」
「ああ、俺はお前に負けたことを認めたから泣いたんだ。負けを認められないお前にはもう負ける気がしない。次はぜってー点を取ってやる」
「今度は僕も点を取らせてもらうよ」ウッチーがヒデの右隣に立って言った。
「お、俺ももっかい点取るぜ!」ゴンがヒデとウッチーの前に出て叫んだ。
みんなが拳を突き上げて「おー!」と雄叫びをあげた。若竹はひるまずに苦笑し、ゆっくりと立ち去った。

あいつ、今ワクワクしてんだよ/レッツ・ダンス(#15)

左サイドのセンターラインを越えたあたりで膝に手をついて今にも倒れそうな優がいる。敵の猛烈な攻撃を味方がなんとか持ちこたえている。ウッチーがボールを奪い、右サイドを上がっていこうとすると、敵チームは素早く戻り、体制を整えている。ウッチーはキーパーにボールを戻す。キーパーからボールをもらったディフェンダーがボールを回しながら、なかなか上がっていかない。
「ボールを取れ!攻めるんだ!」若竹が叫んだ。

「そうだ、もう少しこらえてくれ」ヒデがつぶやいた。
「延長戦になると負けるぞ」監督がヒデに言った。
「優はあとワンプレイが限界だ。攻めるのはできるだけ試合終了に近いタイミングがいい」
「どうしてあんなに疲れてるんだ?」
「何言ってんだ。あいつの速さ、高さ、すごいだろ。限界を越えようとする力を出している。短い時間でも体が悲鳴を上げているんだ。あいつは言ってたよ。最高のパフォーマンスを出せるのは5分だって」
「それで、いつも試合終了前に」
「ああ。俺はあいつの最高のパフォーマンスで最高のシュートを決めたかったんだ。でも、俺が考えていた最高のシュートってのは、一番楽なシュートだった。あの時、優に言われたとおりにやっていれば、最高のシュートを決められたかもしれないのに」
「あとワンプレイできるのか?」
「優の顔を見てみなよ」
監督は俯いている優の顔を見て驚いた。
「笑ってる…」
「あいつ、今ワクワクしてんだよ。三点目を決めた時に皆がどんだけ大騒ぎするか、楽しみにしてんだ。俺がシュート決めた時も、あいつは歓声や皆の表情を楽しんでた」
審判が時計に目をやる。
「でも、もう時間はほとんどないぞ」

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